基礎知識

給与振込がマイナスに!休職や欠勤が続く社員から適法に社会保険料を徴収する方法

 

北海道オホーツク管内では、冬期の厳しい環境による体調不良や、現場作業でのケガなどにより、従業員が急な長期欠勤や休職に入るケースが少なくありません。

会社としては本人の回復を待ちたいところですが、経理担当者を悩ませるのが「給与は発生しないのに、社会保険料だけが引かれて給与がマイナスになる」という現象です。

本記事では、休職・欠勤中の社員に対する社会保険料の取り扱いや具体的な計算シミュレーション、そして適法な徴収ルールと給与計算アウトソーシングの活用法について解説します。

 

1. なぜ「給与がマイナス」という現象が起きるのか?

ノーワーク・ノーペイの原則により、社員が欠勤すればその日数分の給与は控除され、1ヶ月まるごと休んだ場合は給与(総支給額)がゼロになります。

しかし、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、給与がゼロになっても免除されません。

社会保険料は「標準報酬月額(決められた毎月のベース金額)」で計算されるため、実際に出勤したかどうかに関わらず、毎月固定の金額が発生し続けるのです。

項目 欠勤・休職中の扱い
基本給・手当 出勤していないため「0円」となる。
社会保険料 通常通り満額発生する。会社と本人で「折半」する義務も継続。
雇用保険料・所得税 支給される給与がゼロであれば「0円」となる。

結果として、「支給額(0円) - 控除額(社会保険料) = マイナス」となり、会社は本人負担分の社会保険料を一時的に立て替えて国に納付しなければなりません。

 

2. 具体的な「マイナス給与」の計算シミュレーション

実際に1ヶ月間まるごと欠勤した場合の給与明細のイメージをシミュレーションしてみましょう。

【条件】
・基本給:200,000円(月の所定労働日数をすべて欠勤)
・本人の社会保険料負担分(健保・厚生年金):合計 30,000円

計算項目 金額と内訳
① 総支給額 基本給 200,000円 - 欠勤控除 200,000円
0円
② 控除額合計 社会保険料 30,000円 + 雇用保険料・所得税 0円
30,000円
③ 差引支給額
(本人の手取り)
総支給額 0円 - 控除額合計 30,000円
マイナス 30,000円

この「マイナス30,000円」は、会社が立て替えた金額であり、従業員から会社へ支払ってもらう(徴収する)必要のある金額になります。

また、本人負担分以外にも会社が負担する分もあり、最終的には下記のとおりとなります。

負担する人 金額
本人負担 30,000円
会社負担 30,000円
会社が実際に支払う総額 60,000円

 

3. 立て替えた社会保険料の「適法な回収方法」

会社が立て替えた社会保険料を従業員から回収する場合、労働基準法に抵触しないよう適法な手順を踏む必要があります。

主な回収方法は、以下の2つです。

 

パターンA:従業員から会社の口座へ毎月振り込んでもらう

最も確実でトラブルが少ない方法です。

休職に入る前に「毎月〇日までに、指定口座へ〇〇円を振り込んでください」という内容を記載した通知書や覚書を取り交わします。

 

パターンB:復職後の給与や賞与からまとめて天引き(相殺)する

「復職した後の給与から、休職中の立て替え分を引いてほしい」と本人が希望するケースもあります。

しかし、労働基準法には「賃金全額払いの原則」があるため、本人の同意なしに勝手に給与から天引きすることは違法となります。

復職後の給与や賞与から回収する場合は、事前に本人から書面による同意を取得しておくことが重要です。

回収方法によっては、労働基準法上の賃金全額払いの原則との関係が問題となるため、就業規則や労使協定の整備について社労士へ確認することをおすすめします。

 

4. 休職・マイナス給与に関するよくある質問(Q&A)

 

Q. 産前産後休業(産休)や育児休業(育休)の場合も、給与はマイナスになりますか?

A. なりません。

産休・育休中は、年金事務所へ所定の手続きを行うことで「社会保険料が会社負担分・本人負担分ともに免除」されます。

そのため給与から社会保険料が引かれることはなく、マイナス給与は発生しません(私傷病による休職とは扱いが異なります)。

 

Q. 休職中の社員に毎月振り込みをお願いしていますが、支払いが滞っています。どうすればいいですか?

A. 放置すると未回収金が膨らみ、退職後に音信不通になって泣き寝入りするケースが多発します。

未納が1ヶ月でも発生した段階で、内容証明郵便などで速やかに督促を行ってください。

社会保険料は月々発生するため、最初の対応(督促等)が遅くなるほど、未納状態が解消されないリスクが高まります。

 

Q. 傷病手当金が健康保険から振り込まれると思いますが、そこから社会保険料を引くことはできませんか?

A.傷病手当金は直接「本人の個人口座」に振り込まれるため、会社が途中で天引きすることはできません。

ただし、本人から受領委任に関する同意を得ている場合には、会社が傷病手当金を受領し、立て替えた社会保険料等を精算したうえで残額を本人へ支払う運用が行われることがあります。

なお、受領委任の取扱いは加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合等)によって異なる場合があるため、事前に確認することが重要です。

 

5. まとめ:煩雑なマイナス給与の管理はアウトソーシングで解決する

従業員の休職や長期欠勤は、いつ発生するか予測できません。

給与がゼロになった従業員に対して、

  • 社会保険料の立て替え金額の計算
  • 本人への請求・振込確認
  • 未入金時の督促

を毎月個別に行うことは、経理担当者にとって想像以上の精神的・実務的負担となります。

特に休職者が複数人出た場合、給与ソフトの標準機能だけでは対応しきれず、エクセル等での個別管理(属人化)に陥りがちです。

こうした事態を防ぎ、担当者の負担を劇的に減らすため、給与計算を外部にアウトソーシング(外注)する企業が増えています。

休職発生時の社会保険料の計算ルールや、未回収リスクを防ぐための労使協定の整備など、自社での対応に不安を感じたら、まずは労務管理のプロである社労士へご相談ください。

イレギュラーな給与処理にも柔軟に対応できる、正確な給与計算の代行サポートをご提案いたします。

 

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