オホーツク管内

オホーツク農業を支える!技能実習から特定技能への移行と給与計算

 

オホーツク管内の農業法人において、人手不足を解消するため、3年間育成した外国人技能実習生を最長5年働ける「特定技能」へ移行させるケースがあります。

しかし、在留資格が「特定技能」へ切り替り適用される給与ルールを、誤解して運用すると法律違反になる可能性があります。

本記事では、技能実習から特定技能へ移行する際の実務と、給与計算を適正に管理する仕組みについて解説します。

 

1. 絶対ルール「日本人と同等以上の報酬」の罠

特定技能外国人を受け入れる重要な要件が、日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を支払うことです。

技能実習生時代は「最低賃金」で雇用していた場合でも、特定技能へ移行すると同じ業務をする日本人従業員と比較して、給与水準を引き上げなければなりません。

比較対象となる日本人 給与設定の実務的な注意点
同じ業務を行う従業員がいる場合 選果場での箱詰めや収穫作業など、同じ内容の業務を行う日本人のパート従業員等がいる場合、その日本人の時給や基本給と「同等以上」に設定する必要があります。
日本人の従業員がいない場合 比較対象がいない場合でも、近隣の同業他社(他の農業法人等)における賃金水準や、ハローワークの求人相場と同等以上であることが入管の審査で厳しくチェックされます。

 

2. 農業特有の「手当」と「控除」に関する落とし穴

給与本体の引き上げに加え、各種手当や給与天引き(控除)に関しても、日本人と外国人で不当な差をつけることは禁じられています。

給与明細の項目 実務上の落とし穴
通勤手当や精皆勤手当 日本人従業員に支給している手当は、支給要件を満たす限り、特定技能外国人にも全く同じ条件・同じ金額で支給しなければなりません。
家賃や水道光熱費の天引き 社宅や寮の費用を給与から天引き(控除)する場合、実際の経費を超える金額を天引きして不当に手取り額を減らすことは違法行為となります。労使協定の締結も必須です。

 

3. 「日本人との給与格差」による致命的な損失シミュレーション

実習生時代と同じ時給で特定技能外国人を雇用し続けていた場合、出入国在留管理庁等の監査で発覚した際の損失シミュレーションを見てみましょう。

以下、仮の数値となります。

【条件】
・同業務を行う日本人の時給:1,200円
・特定技能外国人の時給:1,000円(最低賃金水準のまま)
・時給差額(未払い賃金):200円
・労働時間:月160時間
・対象人数:3名
・雇用期間(発覚までの期間):過去2年間(24ヶ月)

発生する損失項目 具体的な計算内容と被害規模
① 未払い賃金の一括請求 200円 × 160時間 × 24ヶ月 × 3名 = 2,304,000円の未払い賃金を過去に遡って、報酬差額の支払いや賃金是正を求められる可能性があります。
② 在留資格の取消しと帰国 法令違反(虚偽申告)とみなされ、対象となる外国人材の特定技能資格が取り消され、農繁期であっても強制帰国させられるリスクがあります。
③ 外国人雇用の「受け入れ停止」 悪質な法令違反と判断された場合には、一定期間、新たな受入れが認められなくなる可能性があります。

 

4. 特定技能外国人の給与計算に関するよくある質問(Q&A)

 

Q1. 移行にあたって、基本給を上げる代わりに「家賃の天引き額」を増やして相殺しても良いですか?

A. 絶対にやってはいけません。

入管の審査で厳しくチェックされ、不許可となります。

家賃の天引きは、実費相当額(物件の借り上げにかかった費用などを人数割りした適正な金額)しか認められていません。

給与を高く見せかけるために、不当に高い寮費や管理費を控除する行為は、労働基準法違反および入管法違反となります。

 

Q2. 日本人のパートは時給制ですが、特定技能外国人を月給制にすることは可能ですか?

A. 可能です。むしろ農業においては「安定した月給制(保障給)」が強く求められます。

月給を労働時間で割り戻した「時給換算額」が、日本人の時給と同等以上であれば問題ありません。

農業において雨天等で作業ができない場合は「不可抗力」となるため、労基法上の休業手当を支払う義務はありません。

しかし、入管法の絶対要件として、天候によって外国人の給与が激減し、生活が不安定になるような契約(時給制によるノーワーク・ノーペイ)は実務上認められません。

そのため、天候で休みが発生しても給与額が変動しない「月額固定給(保障給)」で契約を組み、入管法と労基法の双方を完璧にクリアする緻密なルール作りが必須となります。

 

Q3. 昇給や賞与(ボーナス)についても、日本人と同じように支払う必要がありますか?

A. はい、日本人従業員に支給するルールがある場合は、同様に支給しなければなりません。

就業規則や賃金規程に「年1回の昇給あり」「業績に応じて賞与を支給する」と記載されている場合、外国人であることのみを理由に不合理な待遇差を設けることは認められません。

 

5. まとめ:外国人雇用のリスク管理は、厳密な「給与計算」から

特定技能外国人材は、労働力不足に悩むオホーツク管内の農業における大切な人材です。

それと同時に、受け入れ企業には入管法と労働基準法の双方を満たす、高いコンプライアンス(法令遵守)が求められます。

こんな症状があれば重大な法令違反リスクが迫っています
技能実習生の時と全く同じ給与額のまま、特定技能へ移行させようとしている。
日本人従業員と外国人材の「給与規程(ルール)」が社内に明文化されていない。
給与明細に記載のない「謎の管理費や経費」を現金で徴収している。

労務管理において、甘い認識で労務管理を運用することは絶対に通用しません。

技能実習から特定技能への移行や、複雑な待遇ルールの整備に不安を感じた農業法人の経営者様は、労務管理のプロである社労士へご相談ください。

最新のクラウドシステムによる正確な労働時間・控除管理の仕組みを作り、給与計算のアウトソーシング(外注化)まで、経営者が安心できる体制づくりをバックアップします。

 

-オホーツク管内