基礎知識

給与計算における「欠勤控除」と「遅刻・早退控除」の単価計算は同じでよいのか?

 

従業員が仕事を休んだり、遅刻・早退をした場合、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、働かなかった時間分の給与を差し引くのが一般的な実務です。

しかし、経理担当者が悩むのが「1日休んだ場合の欠勤控除と、数時間休んだ場合の遅刻控除」では、計算のベースとなる単価は同じでよいのか?という疑問です。

本記事では、給与計算における欠勤・遅刻控除の単価計算ルール、対象となる手当の分け方などを解説します。

 

1. 欠勤控除と遅刻・早退控除の単価は「同じベース」で計算する

結論から申し上げますと、欠勤控除(1日単位の控除)と遅刻・早退控除(時間・分単位の控除)は、「同じベース単価(1時間あたりの賃金)」から割り出して計算するのが原則です。

給与計算は「1時間あたりの賃金単価」を算出し、それに休んだ日数・遅刻した時間を掛け合わせて控除額を導き出します。

控除の種類 計算の考え方と実務上のルール
欠勤控除(1日単位) 「1時間あたりの賃金単価 × 1日の所定労働時間」で算出された【1日あたりの単価】に、欠勤日数を掛けて控除します。
遅刻・早退控除(時間単位) 「1時間あたりの賃金単価」に、遅刻や早退をした実際の時間(分)を掛けて控除します。

 

2. 控除計算のベースとなる「対象手当」の分け方

単価を計算する際、最も間違いやすいのが「基本給以外の手当を計算のベースに含めるかどうか」です。

労働基準法では、控除に関する明確な法律上の指定がありません。

そのため、会社が自社の「就業規則(賃金規程)」において、どの手当を控除対象にするかを定めておく必要があります。

手当の種類 一般的な取り扱いの目安
基本給・役職手当・資格手当など 仕事の価値や能力に直接結びついているため、原則として控除計算の「対象に含める」のが一般的です。
家族手当・住宅手当・通勤手当など 労働した時間と直接的な関係が薄いため、控除計算の「対象から外す(控除しない)」ルールとする会社が多いです。

※自社の就業規則に「欠勤控除の計算式」の明記がない状態で給与天引きすると、賃金全額払いの原則に違反する労働トラブルになる恐れがあります。

 

3. 具体的な「欠勤・遅刻控除」の単価・金額シミュレーション

それでは、実際の給与額を用いて、単価の割り出しから欠勤・遅刻控除の金額計算までをシミュレーションしてみましょう。

「欠勤・遅刻控除」の単価・金額シミュレーション

下記、例として仮定した金額です。

【条件】
・月給合計:260,000円(基本給250,000円 + 役職手当10,000円)
・1年間の「1ヶ月平均所定労働日数」:20日
・1日の「所定労働時間」:8時間
・当月の勤怠:欠勤1日、遅刻1時間30分(1.5時間)

計算ステップ 具体的な計算内容と金額
① 1時間あたりの単価を出す 260,000円 ÷ (20日 × 8時間)
1,625円(1時間あたりの単価)
② 欠勤控除額(1日分)の計算 1,625円 × 8時間(1日分)
13,000円
③ 遅刻控除額(1.5時間分)の計算 1,625円 × 1.5時間
2,437.5円(端数は切り捨て)

このように、同じ「1,625円」というベース単価を用いて、それぞれの日数・時間を掛けることで控除計算が成立します。

 

控除額の計算方法は労基法に規定なし

控除する額の計算方法は、労働基準法に規定されていません。

ただし、労働しなかった分を「超えて」控除することは、「減給の制裁」に該当して労基法違反となります。

就業規則や給与規定等で控除の計算方法を定めて、労働基準法24条の全額払いの原則を守り、常に労働者が不利にならないように処理することが重要です。

たとえば、下記のように就業規則等に定めて、会社の共通ルールとして運用することが大切です。

  • 賃金は切り上げ
  • 控除は切り捨て

端数処理として、支払うときは「切り上げ」、控除するときは「切り捨て」にすることは労働者にとって不利になりません。

※控除額の端数処理は、就業規則や賃金規程に従って、従業員に不利益が生じないよう統一的に運用することが重要です。

 

4. 欠勤・遅刻控除の給与計算に関するよくある質問(Q&A)

 

Q1. 遅刻の時間を「15分単位」で切り上げて控除してもよいですか?(例:5分の遅刻を15分として引く)

A. 労働基準法違反(賃金全額払いの原則違反)となります。

実際に働かなかった時間分を控除する「ノーワーク・ノーペイ」は認められています。

しかし、5分しか遅刻していないのに15分ぶんの給与を差し引くことは違法です。

遅刻や早退の控除は、タイムカードの打刻に基づき、原則として1分単位で厳密に計算する必要があります。

 

Q2. 冬期の吹雪など、悪天候による公共交通機関の遅延で遅刻した場合も控除してよいですか?

A. 法令上は控除しても違法ではありませんが、就業規則の定めに従います。

会社に責任のない不可抗力による遅刻であっても、働いていない以上はノーワーク・ノーペイの原則により給与を控除することが可能です。

しかし、従業員のモチベーション低下を防ぐため、遅延証明書を提出した場合は「特別有給休暇」として扱い、控除しないルールを定めている企業も多く存在します。

 

Q3. 就業規則に「欠勤控除の計算式」が書かれていない場合、どうなりますか?

A. 控除額の妥当性を巡って、従業員との労使トラブルに発展する可能性があります。

欠勤控除は、働かなかった時間・日数に対応する賃金を支給しないという「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて行われます。

しかし、就業規則や賃金規程に、欠勤控除の対象となる賃金や計算方法が明確に定められていない場合、控除額の妥当性について従業員との間で争いが生じるおそれがあります。

そのため、対象となる賃金、時間単価の算出方法、端数処理などを就業規則や賃金規程に明確に定め、従業員へ周知しておくことが重要です。

 

5. まとめ:手計算による控除ルールの属人化リスクはアウトソーシング(代行)で解決する

欠勤や遅刻・早退の控除計算は、「対象手当の選定」から「1分単位の厳密な端数処理」まで、給与計算において最もミスが発生しやすい業務の一つです。

こんな症状があれば給与計算がストップする危機が迫っています
従業員ごとの遅刻時間を、毎月エクセルや電卓を使って分単位で手計算している。
「どの手当を計算に含めるか」のルールが、長年勤めるベテラン事務員1人の頭の中にしかない。
もし明日、そのベテラン事務員が退職(または休職)したら、遅刻や欠勤の正確な控除額を誰も計算できない。

建設業や医療福祉、製造業など、シフトや勤務時間が複雑な業種において、属人化(特定の担当者しか分からない状態)はリスクです。

給与計算の属人化は、致命的なエラーを引き起こし、従業員との信頼を根底から崩す経営リスクに直結します。

細かな控除計算を安全に回し続けるためには、エクセル等の手作業から脱却することです。

そして、クラウドシステムを活用して「誰がやっても給与計算が回る仕組み」を構築することが最も確実な解決策です。

自社の給与計算体制に不安を感じた経営者様は、まずは労務管理のプロである社労士へご相談ください。

貴社のルールに合わせたクラウド勤怠の導入から、給与計算の代行(アウトソーシング)や、属人化を防ぐ業務の外注化まで、事務部門の安定稼働をバックアップします。

 

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