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試用期間で本採用拒否(解雇)した社員の最終給与と解雇予告手当の計算方法

 

オホーツク管内の地元企業においても、「著しく能力が不足している」「勤務態度が悪く無断欠勤が続く」という理由から、試用期間での本採用拒否を決断せざるを得ないケースがあります。

労働基準法上、試用期間中の本採用拒否は「解雇」であり、対応日数を1日でも間違えれば「不当解雇」や「解雇予告手当の未払い」として労働基準監督署の指導対象となります。

本記事では、試用期間中の解雇において「14日ルール」と、最終給与・解雇予告手当の計算実務について社労士が解説します。

 

1. 「試用期間=いつでも辞めさせられる」は大きな誤解

まず大前提として、試用期間中でも会社と労働者の間には「労働契約」が成立しています。

法的には「解約権留保付労働契約」と呼ばれます。

そのため、経営者の気分や社風に合わないということでは解雇できません。客観的に見て「雇用を継続することが著しく困難である」という合理的な理由が必要です。

そして、給与計算や退職手続きの実務において最も重要になるのが、「解雇を言い渡したのが、入社から何日目なのか」という絶対的な基準です。

 

2. 運命の分かれ道「入社から14日以内か、15日以降か」

労働基準法では、解雇する際には原則として「30日前の予告」又は「30日分の解雇予告手当の支払い」が義務付けられています。

しかし、試用期間中の労働者については、「入社から14日以内」に限り例外的な特別ルールが適用されます。

 

入社から14日以内(暦日)に解雇する場合

入社日を1日目として、14日目までに解雇を言い渡し、その日に退職させる場合は、解雇予告や解雇予告手当の支払いは「不要」です。

ただし、14日以内であっても、解雇理由自体の合理性・相当性は必要です

働いた日数分の最終給与(日割り計算)のみを支払うことで適法に処理が完了します。

ここでの「14日」は労働日(出勤日)ではなく、休日も含めた「カレンダー上の日数(暦日)」でカウントします。

 

入社から15日目以降に解雇する場合

入社から15日目以降になると、試用期間中であっても正社員と同じ「解雇ルール」が適用されます。

即日解雇する場合は、働いた分の最終給与に加えて、「最低30日分の平均賃金(解雇予告手当)」を支払わなければならないという義務が発生します。

これらの違いを比較表で整理してみましょう。

 

3. 「14日以内」と「15日以降」の給与処理の徹底比較

たった1日の違いで、会社が支払うべき金額にどれほどの差が出るのかを確認します。

比較項目 入社から14日以内の解雇(特例適用) 入社から15日目以降の解雇(原則適用)
解雇予告手当 一切不要(0円) 必要(30日分以上の平均賃金)
解雇の予告期間 不要(即日解雇が可能) 30日前の予告が必要(満たない日数は手当で補填)
支払う給与 働いた日数分の「最終給与」のみ 「最終給与」 + 「解雇予告手当」
社会保険の喪失 手続のうえ届出をして喪失 即日解雇(手当支給)の場合は届出をして喪失

このように、15日目以降になると、会社は「働いていない1ヶ月分の給与(手当)」を支払うことになります。

具体的にどのように計算するのか、シミュレーションを行ってみましょう。

 

4. 具体的な給与・手当の計算シミュレーション

【条件】基本給20万円、月末締め・翌月15日払いの会社(月の所定労働日数20日)。

従業員を入社から「20日目」で本採用拒否(即日解雇)したケースを想定します。

この場合、14日を超えているため「最終給与」と「解雇予告手当」の両方の支払いが必要です。

計算項目 計算方法と支給額のイメージ
① 最終給与(日割り) 基本給20万円 ÷ 20日 × 実際に出勤した日数(例:12日)
= 120,000円(給与として所得税や雇用保険を控除)
② 解雇予告手当 平均賃金(※) × 30日分
= 約200,000円(退職所得となるため、給与とは税金計算が異なる)
会社の総負担 合計 約320,000円(+社会保険料の会社負担分)

※平均賃金は、入社後の総賃金を出勤日数などで割って厳密に算出します(入社直後のため特例計算あり)。

ここで、実務担当者が陥りやすい疑問についてお答えします。

 

5. 試用期間の解雇・給与計算に関するよくある質問(Q&A)

 

Q. 即日解雇した社員が、貸与した制服を返してきません。最終給与から制服代を天引きしてもいいですか?

A. 絶対にNGです。

給与からの無断天引きは労働基準法違反となります。

過去の「備品破損時の精算」記事でも解説した通り、給与は「全額払い」が絶対原則です。

最終給与は全額を支払い制服の未返却については、別途「内容証明郵便で返還や買い取りを請求する」という個別対応を行ってください。

 

Q. 無断欠勤が何日も続いて連絡が取れないまま15日を過ぎました。この場合も手当は必要ですか?

A. 原則として必要ですが、例外(除外認定)もあります。

「労働者の責に帰すべき事由(2週間以上の無断欠勤など)」による解雇の場合、事前に労働基準監督署に申請して「解雇予告除外認定」を受ければ、手当を支払わず即日解雇が可能です。

ただし、認定には客観的な証拠(出勤簿や連絡の履歴など)が必要で、非常に手間と時間がかかります。

 

Q. 解雇予告手当から社会保険料や雇用保険料を引いてもいいですか?

A. 引けません。

理由は解雇予告手当は「給与」ではありません。解雇予告手当は労働の対価ではなく、法律で定められた補償金です。

そのため、社会保険料や雇用保険料の対象にはなりません。

給与明細で通常の基本給と混ぜて計算すると、保険料の過大徴収になるため、完全に別項目(または別明細)で処理する必要があります。

それでは、本記事の要点をまとめます。

 

6. まとめ:採用ミスのリカバリーは「適法な給与精算」で完結する

試用期間中の社員を本採用拒否(解雇)する場合、「入社14日以内」か「15日以降」かで、会社が負う金銭的な負担と法的なハードルは変わります。

「本採用ができない」という判断は、15日目以降なら解雇予告手当の支払いが必要です。さらに、その手当を給与計算で誤って処理したり、制服代を天引きすれば労務トラブルが拡大します。

適性を見極めるための試用期間。

期間内に決断し法律に則って、1円の狂いもなく最終給与を精算することが会社を守ることになります。

解雇予告手当の特殊な計算や退職時の天引きなど、まずは専門家へ自社の労務管理フローをご相談ください。

給与計算は会社のリスク管理そのものです。まずは自社の状況をチェックしてみてくださいね。

 

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