外注・効率化

紙の給与明細を廃止!スマホを持たない・不慣れな従業員への対応策

 

毎月の給与計算後に発生する「明細の印刷・封入・手渡し」は、経理担当者にとって大きな負担です。

そのため、明細のWeb化(ペーパーレス化)を検討しても、「デジタル操作に不慣れな従業員」などを懸念し、導入に踏み切れない企業は少なくありません。

本記事では、紙の給与明細を廃止する際の具体的な解決策と、明細発行業務をシステム化して属人化リスクを解消する方法を解説します。

 

1. 給与明細のWeb化における「従業員の同意」という壁

給与明細は原則として書面で交付しますが、一定の要件を満たし、従業員本人の同意を得た場合は、電子データ(Web明細等)による交付も認められています。

これをPDFなどの電子データ(Web明細)で交付するためには、事前に行政が定める要件を満たし、従業員本人から「同意」を得る必要があります。

この同意を得る段階で、従業員が「今まで通り紙で欲しい」と拒否した場合、会社は一方的にWeb化を強制することはできません。

Web化に必要な要件 実務上のハードルと課題
個別の同意取得 「会社のシステムや個人のメールアドレス宛に電子交付すること」について、従業員一人ひとりから同意書(またはシステム上での同意クリック)を取得しなければなりません。
閲覧環境の確保 従業員が受け取った電子明細を、いつでも閲覧でき、必要に応じてプリントアウト(印刷)できる環境を会社側が整えておく必要があります。

 

2. 「スマホを持たない・不慣れな従業員」への3つの対応策

ただ、「全員がスマホを持つまでWeb化は無理だ」と諦める必要はありません。

以下の3つの対応策を組み合わせることで、一部の従業員がデジタル環境に対応できなくても、会社全体のペーパーレス化をスムーズに進めることができます。

対応策の方向性 具体的な運用ルールと手順
対応策1:
社内PCでの閲覧・印刷許可
個人のスマホを持っていない従業員向けに、事務所や休憩室の共用パソコンからWeb明細システムにログインして閲覧できるルールを設けます。会社のプリンターでの印刷も許可することで、「書面が必要な時は自分で印刷できる」という安心感を与え、同意を得やすくします。
対応策2:
例外的な「紙」との併用
同意が得られない数名の従業員に対してのみ、システムからPDFを印刷して紙で手渡しする「併用運用」を認めます。例えば従業員30名中、25名がWeb化するだけでも、封入・配布作業の負担は劇的に軽減されます。
対応策3:
操作マニュアルと個別フォロー
「操作が分からないから嫌だ」という従業員には、文字を大きくした図解入りのマニュアルを配布します。初回のログインやパスワード設定だけを経理担当者が横について一緒に操作(個別フォロー)することで、大半の不安は解消されます。

 

3. 給与明細のWeb化による「コスト削減」シミュレーション

給与明細を紙からWebシステム(クラウド給与等)へ移行した場合、会社にとって金銭的・時間的メリットがあるのでしょうか。

下記、例として仮定した金額です。

【条件】
・従業員数:30名
・紙の明細にかかる費用:専用用紙代、封筒代、一部郵送の切手代(1名あたり毎月約100円)
・封入・配布にかかる時間:経理担当者1名で毎月 約3時間
・Web明細システムの利用料:1名あたり毎月50円(多くのクラウド給与システムに含まれる標準機能)

項目 具体的な計算内容と効果
① 直接的なコストの比較 紙運用:100円 × 30名 = 毎月3,000円
Web化:50円 × 30名 = 毎月1,500円
毎月の資材コストが半減する
② 見えない人件費の削減 毎月3時間かかっていた「印刷・切り離し・封入・仕分け」の単純作業が、システム上の「公開ボタンを1回クリックするだけ」に変わるため、年間36時間の業務時間(見えない人件費)が丸ごと削減されます。
③ 再発行の手間ゼロ 「明細を無くしたので再発行してほしい」と従業員からの依頼も、担当者が動く必要はなく従業員自身がスマホから過去のデータを遡って確認・印刷できます。

従業員全員がスマホを持ってなくても、一部の例外(紙との併用)を許容しながらWeb化を進めるだけで、経理部門の負担は圧倒的に軽くなります。

 

4. 給与明細のWeb化に関するよくある質問(Q&A)

 

Q1. 退職した従業員は、その後Web明細を見られなくなってしまうのでしょうか?

A. 退職後も一定期間閲覧できるように設定するか、退職時にPDFを渡す運用にします。

クラウドシステムによっては、退職者用のアカウントとして数ヶ月間はログイン可能な状態を維持できるものがあります。

もし退職と同時にアカウントを削除する場合は、「退職日までに必要な明細をご自身でダウンロードしてください」と伝えることが重要です。

 

Q2. Web明細のシステムを導入すれば、源泉徴収票もスマホで見られるようになりますか?

A. はい、ほとんどのクラウド給与システムで源泉徴収票のWeb公開が可能です。

給与明細と同様に、年末調整後に発行される源泉徴収票もPDFとしてシステム上で各従業員へ配信できます。

ただし、これも給与明細と同様に事前の同意が必要となります。

明細のWeb化に同意をもらう際、同意書の文面に「源泉徴収票等の各種通知も電子交付とする」という一文を盛り込んでおくとスムーズです。

 

Q3. 万が一、誤った金額でWeb明細を公開(送信)してしまったらどうなりますか?

A. 紙のように回収に走る必要はなく、システム上で即座に差し替えが可能です。

紙の明細を渡した後に計算ミスが発覚した場合、全員から回収して謝罪し、再度印刷・封入をやり直す作業が待っています。

しかしWeb明細であれば、システム上の公開を一旦停止(非表示)にし、正しいデータに修正して再度公開ボタンを押すだけでリカバリーが完了します。

この心理的な安心感こそが、経理担当者にとって最大のメリットと言えます。

 

5. まとめ:給与明細の発行・配布業務を手放し、属人化を防ぐ

給与計算の「明細の作成と配布」は、紙であるためテレワークの阻害要因となり、経理担当者を月末の事務所に縛り付ける大きな原因となっています。

こんな症状があれば事務部門が機能不全に陥る危機が迫っています
毎月、給与支給日の前日は事務員が数時間かけて明細を折りたたみ、封入作業をしている。
「誰に手渡しで、誰が郵送か」という配布の個別ルールが、事務員1人の頭の中にしかない。
もし明日、その事務員が急に休んだら、現場の従業員に給与明細を届けることができない。

一部の「デジタルに不慣れな従業員」の存在を理由に、会社全体のペーパーレス化をやめるのは会社にとって損失です。

自社の給与計算体制や、紙の明細による非効率な業務に限界を感じた経営者様は、労務管理とシステムのプロである社労士へご相談ください。

貴社の従業員層に合わせたクラウドシステムの導入から、給与計算の代行(アウトソーシング)、物理的な配布作業を手放すための外注化まで、事務部門の安定稼働をバックアップいたします。

 

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