オホーツク管内の飲食店において、スタッフの福利厚生として「まかない(食事の提供)」は多いかと思います。
しかし、無料や格安で提供する「まかない」の扱いを間違えると、社会保険の「現物給与」として算定漏れを指摘され、年金事務所から過去に遡って追徴金リスクがあります。
本記事では、飲食店の経営者が知っておくべき「まかない」と社会保険料のルール、追徴による損失シミュレーション、適正な労務管理の仕組みを解説します。
1. 飲食店の「まかない」は社会保険料の対象になる?
まず、「まかない」などの食事を無償または格安で提供している場合です。
この場合、社会保険(健康保険・厚生年金)では現物給与(労働の対価)となり、社会保険料の算定基礎(報酬)に含まれます。
現金で支払う給与だけでなく、食事の提供も「目に見えない給与」として評価し、標準報酬月額に加算して社会保険料を計算しなければなりません。
算定から漏れていると、年金事務所の調査等で指摘を受けます。
| 提供のパターン | 社会保険の算定上の取扱 |
|---|---|
| 無償で提供する場合 (無料のまかない) |
全額が「現物給与」として社会保険の報酬に【含まれます】。都道府県ごとに定められた食事の「標準価額」を給与に加算して計算します。 |
| 現金で食事手当を 支給する場合 |
現金で支給する手当は、金額に関わらず全額が「報酬」に【含まれます】。そのまま標準報酬月額の算定に含める必要があります。 |
※全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)については、日本年金機構のHPで確認できます。
2. まかないが「現物給与」となる基準と免除のルール
次に、食事の提供が社会保険の現物給与として加算されるかどうかです。
この場合、従業員が食事代をいくら負担しているか(給与から天引きしているかによります。
実務上、ここは非常に間違いやすいポイントですので、現在の運用がどちらに当てはまるか確認してください。
| 従業員の負担額 | 実務上の正しい対応 |
|---|---|
| 標準価額の2/3未満の 負担(または無料) |
「標準価額」から「従業員が実際に支払った額」を差し引いた差額を、現物給与として社会保険の報酬に【加算する必要があります】。 |
| 標準価額の2/3以上の 負担 |
会社からの利益供与はないものとみなされ、社会保険の報酬への【加算は不要】となります。 |
3. 算定漏れによる「社会保険料の追徴」損失シミュレーション
「まかないは無料だから給与とは関係ない」と誤解していたとします。
この場合において、算定基礎届から現物給与を除外したまま、長期間給与計算をしていたとしてシミュレーションします。
【条件】
・対象人数:社会保険に加入しているスタッフ3名
・まかない:1日2食を無償提供
・現物給与の加算による標準報酬月額への影響:「1等級」上がると仮定
・社会保険料(労使合計)の差額:月額約6,000円/人(会社負担3,000円・本人負担3,000円)
・遡及徴収期間:過去2年間(24ヶ月)
※労働基準法の未払い賃金は時効3年ですが、社会保険料の遡及(時効)は「最大2年」です。
| 発生する損失項目 | 具体的な計算内容と被害規模 |
|---|---|
| ① 社会保険料の遡及徴収 | 差額6,000円 × 24ヶ月 × 3名 = 432,000円を一括で年金事務所へ納付する義務が生じます。 |
| ② 従業員からの過去分徴収トラブル | 本来は労使折半です。そのため、会社は立て替えた社会保険料の半分(216,000円)について、どのように処理するのか従業員に説明しなければなりません。 |
| ③ 従業員の不利益(将来の年金額低下) | 標準報酬月額が低く申告されていたということは、従業員が将来受け取る「厚生年金」の受給額や、休んだ際の「傷病手当金」の金額が不当に低くなっていたことを意味します。 |
4. 飲食店のまかないと給与計算に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 余った食材や廃棄予定のお弁当を従業員に持たせて帰る場合も、現物給与になりますか?
A. 定期的・継続的な提供でなければ、原則として現物給与にはなりません。
「余ったから渡した」というような突発的なものであれば、労働の対価(報酬)とはみなされません。
ただし、それが毎日のように提供され、実質的な食事の供与となっている場合は、現物給与と判断されるリスクが高まります。
Q2. 給与から「まかない代」として毎月一定額を天引きしていれば問題ありませんか?
A. 天引き額が、法律で定められた「標準価額の2/3以上」であれば加算は不要です。
いくら天引きしていても、その額が少額すぎると、標準価額との差額を現物給与として加算しなければなりません。
北海道の標準価額(食事)の最新の表を確認し、正しい金額を負担させるよう設計する必要があります。
Q3. 社会保険に加入していないパートやアルバイトのまかないはどうなりますか?
A. 社会保険料の算定(現物給与)の問題は発生しませんが、所得税(税務上)の扱いに注意が必要です。
社会保険に加入していない従業員には現物給与のルールは適用されません。
ただし、税務上も食事の提供に関する非課税の基準(従業員が半額以上を負担している等)があるため、完全に無料で提供していると給与として課税対象になる場合があります。
※税金に関することは、必ず顧問税理士へご確認ください。
5. まとめ:良かれと思ったまかないが給与計算の落とし穴に
北見市などオホーツク管内の飲食店において、「まかない」は貴重な人材を確保し、定着させるための素晴らしい制度です。
しかし、社会保険のルールを理解せずに運用すると、会社にも従業員にも痛手となる時限爆弾になります。
| こんな症状があれば重大な法令違反リスクが迫っています |
|---|
| ☑ 毎日無料でまかないを提供しているが、社会保険の算定基礎に「現物給与」として加算していない。 |
| ☑ 従業員からまかない代を徴収しているが、その金額が法律で定められた基準を満たしているか確認していない。 |
| ☑ 給与計算システムの現物給与の設定項目を、よくわからないまま空欄にしている。 |
年金事務所の調査で過去の算定漏れを指摘されると、会社が多額の追徴金を納めるだけでなく、従業員へ過去の保険料を請求する事態は避けたいものです。
現物給与の正しい計算設定や社会保険の算定ルールに不安を感じた飲食業の経営者様は、労務管理のプロである社労士へご相談ください。
独自の福利厚生に応じた正しい設定を行います。
そのうえで、給与計算のアウトソーシング(外注化)まで、経営者が安心して店舗運営と本業に集中できる体制をバックアップいたします。